#16 Fluになぜ"The"が付くのか

♣ Newsletter #16 なぜfluにはtheが付くのか?
I’ve come down with the flu. 不覚にも流行りのインフルエンザに罹ってしまいました。症状が辛いので皆さん気を付けて、手洗いなど励行してください。さて「転んでもただでは起きない」を実践し、今回はインフルエンザやその他の病気にまつわる単語と冠詞の関係を取り上げます。

冒頭で私はthe fluと書きましたが、インフルエンザの正式病名influenzaは抽象名詞なので無冠詞で使います。なぜ短縮形だとthe fluになるのか?熱にうなされながら疑問が沸きました。
まずinfluenzaはpneumonia, diabetes, cancer, tuberculosisなどと同様にラテン・ギリシャ語由来の単語で、重篤な病気の名前は通常無冠詞で使います。しかし口語で「インフル」と言えばthe flu。なぜtheが付くの?調べると、表現が生まれた歴史的経緯で説明できるとわかりました。大勢の人々がこの単語を口にするのはインフルエンザが大流行しているときであり、the fluと言えば the flu that is going around を示唆します。つまりtheには「みんな知っている」というニュアンスがあるのです。インフルエンザは毎年決まった時期に流行し、社会全体がその存在をはっきり認識するので、口語表現the fluが定着したと言われます。これは他の流行病も同様で、the chickenpox(水疱瘡), the mumps(おたふくかぜ), the plague(ペスト)にはイディオムとしてtheが付きます。
正式病名influenzaと口語表現the fluの使い分けでは、合わせる動詞との相性を考える必要があります。下記のcontract(感染する)やdiagnose(診断する)などラテン語由来の動詞をthe fluに使うと、レジスタ・ミスマッチが生じるので、これらの動詞は正式名称 influenza(無冠詞)と組み合わせます。
フォーマル
- I contracted influenza.
- I was diagnosed with influenza last Monday.
インフォーマル
- I have/get/come down with the flu.
(Anglo-Saxon系の基本動詞がピッタリ)
そして、ただの風邪の場合はなぜa coldかと言えば、日常的な病気で誰もがいつでも罹る可能性があるから。風邪の症状には始まりと終わりがあり、1回の出来事として認識されるため可算名詞というわけです。その意味でcoldは複数形にもなります。
Adults average two to four colds per year.
aを伴う日常的な病気には、他にa headache, a fever, a stomachache, a toothacheがあります。咳の症状があるとき(何度も咳が出る)にはI have a coughと言います。このときa coughは「一回の咳」ではなく、咳が続く症状全体を表します。文脈により「1回、2回と数えられる咳払い」を意味するときも、a cough (単数)・coughs(複数)と可算名詞になります。
She gave a cough to get her boss's attention. 一回の咳払い
She had a cough for two weeks. 咳の症状
「文脈により」と書きましたが、上記では動詞がポイントです。giveが示唆するtime frameは一瞬なので「咳払い」と解釈できます。haveのtime frameは2週間なので、これは「咳の症状」です。このように単に冠詞の種類だけではなく、文脈(context)の中で意味は決まります。
次は複数の使い方。
He cleared his throat with two loud coughs. 2回の咳払い
There are different types of coughs, such as dry coughs and wet coughs. 種類
coughを病気の「カテゴリ」と捉えて無冠詞で使うこともできます。
There are different types of cough, such as dry cough and wet cough.
レジスタの点では、この英文の方がフォーマルで医療分野の文献向きです。
日本人にとって無冠詞・the・aの使い分けは実にやっかいですね。
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少し気が早いかもしれませんが、12月に忘年会も兼ねて懇親会を企画しました。

7月のニュースレターで少しお伝えした懇親会ですが、少しお勉強的な時間も取ってから「懇親会」を設けることになりました。遠田先生からミニプレゼンも予定しています。先生のお話を聞いたり、皆さんとディスカッションした後は、ご用意した軽食や飲み物を片手に、皆さんと楽しく過ごせればと思います!
希望者には自由テーマで5分プレゼンをしてもらおうかとも考えています。いかがでしょうか?他のアイデアがあればどしどしお寄せください!
「とりあえずみんなと楽しくおしゃべりしたい!」
「同じ興味を持ついろんな人と知り合って、ネットワークを広げたい!」
「AIのことも含めて、翻訳の深さや悩みについてじっくり語りたい!」
……という方、大歓迎です!固い講義ではありませんので、リラックスした雰囲気で気軽に受講&交流を楽しんでいただければと思っています。
また、当日は会場内に「共有スペース」もご用意します。「これ面白いよ!」「みんなに見せたい」というおすすめの本や資料、ノートなどがあれば、ぜひご自由にお持ち寄りください。
先着12名様限定の少人数イベントです。早めにお申込ください。
【イベント詳細】
日時: 2026年12月5日(土)14:30 〜 17:30
会場: OtonovaCoco
住所: 東京都新宿区信濃町34-1 トーシン信濃町駅前ビル 地下1階(味 プロムナード内)
参加費: 4,000円(サンドイッチなどの軽食・ドリンク代込み)
定員: 先着12名
持ち物: シェアしたい本や資料(任意)
※少人数制のため、定員に達し次第受付終了となります。ぜひお早めにどうぞ!
キャンセル:如何なる理由でも受け付けておりません。
♣ 遠田先生の他のセミナー (当英語LAB以外)
以下、遠田先生から皆さんへ、当LAB以外のセミナーのご紹介です。
2026年後半に予定されているセミナー・講座の案内です。
<日本テクニカルイングリッシュ協会>
1.『遠⽥和⼦先⽣の⽇英技術翻訳 中・上級スキルアップ―「⼈」のスキルを後世に伝える』
10⽉10⽇(⼟) 14:00-16:00 一般 ¥10,000 会員 ¥9,000
2.『英語でロジカル・シンキング―英語で話す・書く・プレゼンするためのコツ』
11⽉28⽇(⼟) 14:00-16:00 一般 ¥10,000 会員 ¥9,000
♣ My Story (penguinophileさん)
<三兎を追って>
皆様、こんにちは。ドイツ在住の私が遠田先生の教えを受けるようになったのは、5年ほど前の事です。コロナ禍で対面授業が難しくなった時期に、翻訳学校がオンライン講座を提供し始め、姉(前回執筆のEchch)が勧めてくれた遠田先生の講座を受講しました。オンラインとはいえリアルタイムで直接指導して頂けるのは、通信講座とは全然違いますね。翻訳講座の門戸が地方在住者や海外在住者にも開かれた事は、私にとって、コロナ禍で唯一の喜ばしい変化だったかもしれません。
私は日独英の三か国語を日常的に使っています。と言えば聞こえはいいですが、現実には「三兎を追う者は一兎をも得ず」の日々です。昔は「英語の冠詞と前置詞は一生理解できない」と絶望していましたが、今では「英語の冠詞は何とかなる」と思うようになりました。遠田先生の冠詞本のお陰で理解が進んだ事もありますが、なにしろドイツ語の冠詞が複雑過ぎるのです。例えば英語の定冠詞はtheだけ。ところがドイツ語の定冠詞は性4(男性・女性・中性・複数)×格4(主格・属格・与格・対格)の16変化。更に難解なのが形容詞で、性4×格4×冠詞3の48変化。全ての変化表を頭に叩き込んだところで、個々の名詞の性がわからなければ水の泡。ちなみにスカートは男性、ズボンは女性、ドレスは中性。
ドイツ語を母語とする人にとって、ドイツ語を単純化したような英語の習得は、比較的容易だと思われます。高校の定期試験は、与えられた英文について「(1)要約せよ、(2)分析せよ、(3)意見を述べよ」という課題に対し、90分ひたすら英語で回答を書きまくるというスパルタな内容です。英語以外の外国語学習は、州や学校によって扱いが違います。うちの子供達は、5年生からラテン語(必修)、9年生からフランス語(選択)を習っていますが、ラテン語はドイツ人にとっても難しいようです。逆に英語より更にドイツ語に近いのがオランダ語でしょう。去年、オランダに小旅行する機会があったのですが、英「Chocolate」蘭「Chocolade」独「Schokolade」など、オランダ語は英語とドイツ語の中間のように感じました。現地で看板などを見ても、英語やドイツ語の似た単語を連想し、何となく内容を察する事ができました。ドイツ人の夫によると「カタカナから英単語を類推するのと似ている」らしいです。
語学学習がボケ防止の脳トレのように思えてきた昨今ですが、興味を持って学び続けられる分野があるのは、有り難い事です。今後も遠田先生や英語道・翻訳道邁進中の皆様から刺激を受けるのを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。
♣運営者より
🍀 Claude AI活用セミナー for 翻訳者&英文ライターを開催しました。
9月26日に開催した「Claude AI活用セミナー」、たくさんのご参加ありがとうございました。当日の内容を振り返っていただけるよう、Gemini Notebookで作成した音声解説ファイルを公開します。通勤や家事の合間に、ぜひお聴きください。
また、アンケートに記入していただいた方のSummaryをGoogle Docsで共有することにしました。翻訳に向き合い続ける方々の貴重なお声をどうぞご覧ください。


遠田先生、その後インフルエンザは全快されましたでしょうか。発熱だけでなく、咳でも体力を奪われることが多いので、栄養のある食事をしていただいて、一日でも早くお元気になられることをお祈りしております。
でも、普段からハイキングやダンスをされているので、きっと快復もお早いことと思います。
レジスタ・ミスマッチは、私が一番気づけないミスですね。ラテン語由来かどうか、ということも、全ての単語について調べる余裕がないのですが、そういう勘も、日々の経験の積み重ねしかないと思います。医療分野など、フォーマルな用語が出てくる分野などは特に注意が必要ですね。
coughについても、「咳って何度も出るのが普通だから、複数だったら間違いない。」と思いこんでいましたが、咳払いの場合もあったり、症状の場合は、不定冠詞や無冠詞の方が適切なのですね。
冠詞によって意味が異なる可能性について、もっと敏感にならなくては、と思いました。