#6 JTF 翻訳祭に参加して
- endaenglishlab
- 3 日前
- 読了時間: 6分

目次
♣ はじめに
遠田和子
11 月 8 日に英語 LAB 初の kick-off オンラインセミナーを開催し、岩 渕デボラさんとともに、事前課題に取組み・提出いただいた訳文のライブ添 削を行いました。熱意に溢れ翻訳に真摯に向き合う参加者皆さんの姿勢 に、デボラさんも私も感激しました。 目的・興味を共有する人々が集い、気楽に交流できるコミュニティーとして 当英語 LAB を育てていきたいと思っています。皆さんのお知り合いにもどん どん声を掛けてください。仲間を増やしていきましょう。
♣ Topic JTF 翻訳祭に参加して
11 月 5 日に開催された JTF 翻訳祭に 6 年振りに参加しました。以前は 毎年のように参加し何度か登壇もしましたが、最近はテーマが機械翻訳 (MT)に移り、モティベーションが上がりませんでした。今回は、認知心理学 者・今井むつみ氏の基調講演 「AI時代に求められる言語力」を聞くのが 最大の目的。今井氏の著作は何冊も読んでいて、特に『ことばと思考』は私 自身が冠詞の本を書くときに大いに参考になりました。言語が私たちの世界 認識に与える影響を掘り下げる本で、翻訳者にとり示唆に富む内容です。み なさんにもお勧めします。
今井氏のトークについては他の機会で取り上げるとして、今回の翻訳祭で は MT や AI のベースである large language model(LLM)の広がりを 痛感しました(今更ですが)。そこで、以下で「AI 時代に求められる翻訳.. 力.」についての業界の声と私の考えを述べます。
まず業界の声。あるセッションで、某翻訳会社の社長さんが「今後すべて の翻訳は MT が前提(=下訳は MT)となり、translator と post editor の区別はなくなる。translator = post editor の時代が来る」と発 言し、「しかし最終品質を保証するのは人間だ」と続けました。この二つは矛 盾する!と思っていると、すかさず聴衆の一人が「では、どのようにその post editor を訓練するのか?」と質問しました。対する答えは「チェッカーはどれ が正しい英語かわかるはず」という的外れのもの。翻訳品質を評価するに は高度な技量が必要です。「意味を訳す」という翻訳の神髄を理解するに は、文化・認知の壁を乗り越えて異言語間に橋を架ける実体験の積み重 ねが必須です。
セッションが終わり、「AI の時代に翻訳者は何をすべきか」と考えつつ交 流パーティーに参加しました(色とりどりの個人翻訳者が集まった昔と様変 わり!MT 関連企業の黒スーツ集団が席巻していました)。そこで別の翻 訳会社社長と話したところ、先ほどとは異なる見解が聞けました。その方に よれば 「企業では最近、高品質の英語文書を作成する機運が高まってい て(特に IR 分野)、トップ・レベルの人間翻訳者に対する需要が非常に 大きい」とのこと。この発言は、翻訳祭セッションで業界外の登壇者(今井 氏ともう一人の大学教授)が語った「創造的な領域はAIの弱点であ り、人間にしかできない」という講演内容に通じるものでした。私自身も同 じ想いです。人間英訳者としてはAIが苦手とするクリエイティブな領域 で、字面の裏に隠れた情報を補填する力を磨き、高品質を目指す。それ が「AI 時代に求められる翻訳力 ...」だと私は考えます。 最後に今井氏の講演で印象に残ったのは次の言葉。
AIには「好き」がない。
「翻訳が好き・翻訳は面白い」と思うこと。
これが私たちの大きな強みでは ないでしょうか。
ご意見・ご質問をぜひこちらからの📃フォームからお寄せください
♣ セミナー他のお知らせ
2025 年中 ニュースレター第 7 号を 12 月に発行予定。
来年の企画:PowerPoint 2026 年のイベント第一弾として、「PowerPoint (PPT)の翻訳」を取り上 げようかと考えています。PPT 翻訳は、過去のアンケートで多くの要望をいただ いていたテーマです。シンプルで見やすいスライドを作るには簡潔な英語が必要 で、スピーチ原稿の訳では補足や聴くだけで理解しやすい英語が求められま す。そのような PPT 独特のコツをお伝えしたいです。12 月の Newsletter で 詳細を発表しますので楽しみにお待ちください。
♣ 運営者より
📚 「人が訳す価値」を再認識したオンラインセミナー 11 月は、5 日の JTF 翻訳祭、8 日のオンラインセミナーと立て続けにイベントがあり、非 常に慌ただしい月でした。しかしその分、翻訳の世界に深く浸ることができ、運営者として も大きな学びと収穫のある日々となりました。
特に、8 日に岩渕デボラさんをお迎えして開催したライブ添削セミナーは、今も強く印象に 残っています。一文一文、時制や代名詞を丁寧に調整していくデボラ先生の繊細な視 点に触れ、人が訳すことの価値と力強さを改めて感じました。翻訳という仕事の魅力を再 認識する時間となりました。
セミナーは、ご参加くださった皆さまの真剣な姿勢と温かい雰囲気に包まれ、充実した時 間となりました。参加した皆様には心より感謝申し上げます。今後もオンラインセミナーは 終了後に録画を共有しますので、当日参加が難しい方も、次回はぜひご参加ください。 💡
今回から読者の「Story」をご紹介します
前回の運営者コラムでは、「なぜ私が遠田先生の英語 LAB を立ち上げようと思ったの か」というストーリーをご紹介させていただきました。これに対して何名かの方から温かいメッ セージをいただいたので、今後は、その一部をこの場で少しずつご紹介していく予定です。 皆さんも、もしご自身の LAB にまつわる Story がありましたら、ぜひお寄せください。
以下、引用―――――――――――――――――――――――――――
私が英語 LAB に参加したのは、ご存じのとおり昨年のオンライン英訳講座がきっかけです が、それまで数年間、遠田先生のクラス受講を検討していました。ただ、コロナのためすべ てオンライン形式で、永野さんと同じく対面派の私は、ずっと対面形式の講座が始まるの を待っていました。
でも、待ち続けていては時間がもったいないと思い、仕事量が少なく時間に余裕があった 昨年の 6 月~8 月に、オンライン講座を受講することにしたのです。遠田先生の授業内 容は期待通り素晴らしいものでしたが、それだけでなく、同じく翻訳を仕事にしている方々 と出会えたことがとても嬉しかったです。
これまで様々な職場で翻訳者として働いてきましたが、ほとんどの場合、部内に翻訳者は 私一人、チェックやレビューをしてくれる方もいない状態でしたので、翻訳学校の講座という 枠を超えて英語 LAB というコミュニティに加わることができたのは本当に幸運だと思ってい ます。
今後もなるべく多くのイベントや講座に参加したいと思っています。どうぞよろしくお願いいた します。 Nickname Ritz さん
ご意見・ご質問はぜひこちらからの📃フォームからお寄せください。 お待ちしております。



コメント